貸借対照表・損益計算書深掘り
貸借対照表、損益計算書の理解を少しだけ深められそうな、簿記入門者のためのお話です。
軽い気持ちでご覧ください。
【準備編】かき氷屋さん
これは暑い夏の日のちょっとした物語です。
丁度暑い時期なので、取代さんは会社の夏休みの1週間限定でかき氷屋さんをやってみようと思い立ちました。
我が社、副業OKなんですよ。
夏休み使ってお小遣いを稼いじゃおうと。ちゃっかりしてますね。
副業、一応会社に許可を得ないといけません。
早速社長に相談です。

夏休みを使ってかき氷屋さんをやってみたいんです。
副業として、認めていただけますか?

面白そうじゃない。副業、許可しましょう。
かき氷屋さんやるには、お金かかるよね。私から少しだけ資金を提供しましょうかね。
そのかわり、会社の今後に役に立つかもしれないから、レポート提出してもらってもいいかな?

1万円も良いんですか?頑張ってみます。 結果、報告しますね!
ってなわけで、1万円ゲットです。
社長、気前がいいですね。
取代さんは、この1万円を元手にして早速準備を始めました。①
まずはかき氷の機械ですね。
1週間の挑戦なので、本格的なものじゃなく、近くの家電量販店で6,000円のかき氷機をゲットです。②
取代さんは実家暮らし。
場所はお家の道路に面した庭で始めることにしました。
場所代は自宅なのでもちろんタダ。
庭で始めるというのも、ある程度の人通りを見越しての事です。
小学生や中学生が良く通る道なので、取代さんはその子供たちをお客さんのターゲットに選んだようです。
そしてまずは肝心の氷の準備ですね。
冷蔵庫は自宅なので電気代はタダって事で。
味にはこだわりたいので、氷はちょっといい水をスーパーで買ってきて凍らせます。
シロップは、本格的な果汁100%のオレンジジュースを使う事に決めました。
味はオレンジの1種類で勝負です。

水の代金は、かき氷1杯分で40円、シロップとなるオレンジジュースはかき氷1杯分で60円かかります。
かき氷1杯にかかる材料代は水とオレンジジュースで100円。
それを元に考えて、販売価格は1杯200円に設定しました。
小学生や中学生に丁度買いやすい金額設定。抜け目がないですね。
社長に提供してもらった1万円のうちから、かき氷機を6,000円で買ったので残りは4,000円。
取代さんは自信満々なので、オープン前日にスーパーに行って、水とオレンジジュースを手持ちの4,000円全額使って買ってきました。
内訳は水が1,600円、オレンジジュースが2,400円です。③
これで40杯分のかき氷を作ることができます。
【準備中のまとめ】
①社長に準備してもらった元手:10,000円
②家電量販店でかき氷機購入:6,000円
③かき氷用の水とオレンジジュースを購入:4,000円(水/1,600円、オレンジ/2,400円)

【オープン編】かき氷屋さん
さて、翌日、夏休み初日。いよいよオープン!
紙で作ったお手製かき氷垂れ幕のおかげもあって、オープン直後から大盛況です。
初日は何と35杯も売れました。
全部現金で売れて、7,000円の収入です。④
前日に買ってきた水やオレンジジュースは、あと5杯分しかありません。
このペースだと、明日の開店早々に、材料を使い切ってしまいそうですね。
でももう、初日のてんてこまいでクタクタの取代さん。
材料を買いに行く気力がわきません。
そんな時、デンタクさんから丁度スマホにメッセージが届きました。

かき氷屋さん、うまく行ってる?

初日から35杯も売れるという大盛況なんですが、ちょっとピンチです!

どうしたの?

明日のための材料が足りなくなりそうなんですが、もうクタクタでこれから買いに行くの、ちょっとためらっているんですよ。
明日はかき氷屋さん、お休みにしようかなって思ってます。

ちょうど近くにいるから、スーパーで材料、買って持っていこうか?

いいんですか?嬉しいです!お願いします!
というわけで、たまたま近所にいたデンタクさんが、スーパーで材料を調達してきてくれました。
しかも、初日に売れた数を聞いていたので、この後6日間持ちこたえられそうな、250杯分の材料を買ってきてくれたんです。
水を10,000円分、オレンジジュースを15,000円分買ってきてくれたんですね。
合計25,000円。
ちょっと金額的に大きいですね。
デンタクさん、ここでも気遣いの人です。

今日買ってきた材料代は、1週間後に払ってくれればOKだよ。⑤

何から何まですみません!
明日からも頑張って売って、しっかり返しますね!
というわけで、取代さんは翌日から、この250杯分を売り切ったら閉店しようという意気込みで、かき氷屋さんを続けました。
【初日のまとめ】
④現金収入:7,000円
⑤デンタクさんが追加してくれた水とオレンジジュース:25,000円
内訳:(水/10,000円、オレンジ/15,000円)

【売上編】かき氷屋さん
結果、やはり初日と変わらず日々大盛況。
初日の材料の残り5杯分と、デンタクさんが買ってきてくれた材料250杯分をなんとその後5日ですべてを売り切り、営業終了とすることにしました。
2日目以降、全部で255杯売れたので、なんと51,000円の収入です!(ここでも全部現金での収入です。)⑥
こんなにうまく行くと思わなかった取代さん、もう大満足です。
そうそう、社長にレポートの提出が必要でしたよね。
忘れないうちにまとめておきましょう。
①社長に準備してもらった元手:1万円
②かき氷機の購入:6,000円
④初日の売上:7,000円
⑥その後5日間の売上:51,000円
③オープン前日に準備した水:1,600円、オレンジジュース:2,400円
⑤デンタクさんが追加で買ってきてくれた水:10,000円、オレンジジュース:15,000円
そして、この追加の材料の代金はデンタクさんに借りている状態です。
はい!ここで一区切りついたので「どれだけ儲かったの?」「良くも悪くも何がどれだけ残っているの?」の計算です。(一区切りは会社で言うところの決算ですかね)
①から⑥の金額から導いていきます。
まずはどれだけ儲かったの?から行きましょうか。
収入は58,000円。
材料代は全部で29,000円です。
これで儲けがいくらだったのか出てきますね。
58,000円-29,000円=29,000円。儲かりましたね。
次に「良くも悪くも、何が、どれだけ残っているの?」です。
まずはわかりやすいところから、売上の全部が現金での収入だったので、手元に58,000円の現金があります。
あと、かき氷機も買いましたよね。手元にありますし、今後また使うかもしれないので残しておきましょう。そんなわけで今回は「何がどれだけ残ってるの?」のリストに加えておきます。これが6,000円。
そしてデンタクさんが一旦払ってくれた材料代、これ、返さないといけないですよね。
返すとお金減っちゃうので、ちょっと寂しいですが、借りたお金は後で必ず返しましょうという事で
それが25,000円。あまりうれしくないけど、借りたという事実が残っているのでこれもリストに加えます。
あとは社長が提供してくれた元手の10,000円、
これ、社長は「貸す」とも「あげる」とも言っていませんよね。
という事はこれは社長の持ち物です。
いつかは社長に戻すかもしれませんが、返してくれとも言われていません。
あくまでも協力しようという社長の気持ちですね。
現時点ではそのままなので、これもメモしておかないとですね。
そんなわけで、こんな表が2枚出来上がります。


どうですかね。
儲け29,000円は、取代さんが嬉しくなって、どちらの表にも派手に書き込みました。
取代さん、猛アピールです。
「えへへ!儲かっちゃいましたよ!」って事なんでしょう。
たまたまなんですが、社長が出してくれた元手の下に、結果としていくら儲かったのかを取代さんが書きましたね。
これ実は結構理にかなっていて、そもそも社長が元手を出してくれなかったらこの儲けって無かったわけですよね。
なので、元手に対する結果としてここにメモっておくのって、結構意味があります。
あと、「何がどれだけ残っているか」の表で、良くも悪くも…と言いましたが、その悪くも…に当たる部分が、デンタクさんに借りている分ですね。
取代さんにしてみれば、あとで返さないといけないので、あまりうれしくないですね。
でも、借りているという事実はしっかりメモしておかないといけないですよね。
どうでしょうか。
取代さんの副業の1週間。
そして社長へ報告するレポート。
うまくまとまったんじゃないですかね。
めでたしめでたしという事で、簿記の話に戻してみましょうかね。
「どれだけ儲かったの?」が損益計算書、
「良くも悪くも、何がどれだけ残っているの?」が貸借対照表って事になります。
ちなみに、「どれだけ儲かったの表」、「何がどれだけ残っているの表」のそれぞれの左右の金額を儲かった金額も含め、電卓で合計してみてください。きっと左右の金額、一致しますよ。これも貸借対照表や損益計算書の特徴です。(どちらの表も結局は仕訳の集合なので右、左の金額は必ず一致します。)
何となくですがイメージできましたかね。
そんなところで長らくお付き合い、ありがとうございました。
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